暴走族に恋をする。



それからはただただ快斗が暁斗くんに、質問攻めをしていた。

莉奈のどこが好きなのか、とか
いつから好きなのか、とか
これからどうするのか、とか。

莉奈が好きなのは快斗なのを知ってるから、なんだかそれがすごく変な感じと言うか……
莉奈にとって、どうするのが一番なのか、私にはわからなかった。


だから、なにも言うことができなかった。


「ところでさ、桜子ちゃん!」


「え、なに?」


「あの写真、誰?」


そういって暁斗くんの指差す方には、お兄ちゃんの写真があって……


「……お兄ちゃん。
私ブラコンなんだ~。」


そうやって、笑って誤魔化すしかできなかった。
本当のことを言ったらきっと、せっかくの楽しい時間が壊れてしまいそうで。


「へー、何歳?
あんまり歳変わんない?」


「……うん。そうだよ。
あんまり変わんないかな。」


あれは高一の写真。私と同い年のお兄ちゃんだ。


「へー。今日はお兄さん出掛けてんの?」


「……お兄ちゃんはもう、この家にはいないの。」


「そっかー。じゃあ寂しいなー。」


「うん、すっごく…」


だからどんな瞬間も忘れたくなくて、私はいろんなところに、お兄ちゃんの写真を飾る。

お兄ちゃんの笑顔を、忘れたくなくて……



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