暴走族に恋をする。
「あの、快斗は今…」
「うん、今はとりあえず寝てるだけだって。」
おばさんはそういって椅子をとったから、私も椅子に座ることにした。
「快斗ね、右の肩から手にかけて擦り傷が多いの。
だからきっと、腕で頭を守ったんでしょう、って。
運動神経と反射神経が抜群ですねって誉められたよ。」
はは、なんて笑ってるけど
笑ってるところじゃないから!!
「快斗は全身打撲みたいな感じなんだけど、内蔵は大丈夫みたい。」
「でも、あの出血は…」
「あれはバイクに突起物がついてて、そこに足が刺さったみたい。
とにかく刺さった場所が足でよかったって。
それがお腹とかだと危険だっただろうって。」
「…そっか、よかった…」
「あの、龍一の方は…」
黒崎くんはもう、誤魔化すことはできなかったのか
中村龍一の名前を口にした。
「うん、現行犯逮捕。
今回は無免許にスピード違反に、前方不注意で危険運転過失致傷になるから、起訴して執行猶予取消になる可能性が高いって。
今こっちで弁護士雇ってるから、きっと実刑になる。
執行猶予中の類犯は取消になる可能性が大きいから。」
「……そうなんですね」
じゃあ…快斗の痛みも無駄にはならないんだね。
あいつはやっと…やっと……
……お兄ちゃん、やっとだよ…
「桜子泣きすぎ。」
「だって、嬉しくて…」
「悲しくて泣いて、嬉しくて泣いて、忙しいやつだな。」
「うるさいよ。」
そんな隼斗さんの憎まれ口も、今は優しく聞こえる。
本当に……