暴走族に恋をする。
それから私は一教科一教科、みんなに丁寧に勉強を教わった。
快斗には背中を向け、現実逃避をするように。
「みんな、もう7時だしご飯にしよう?
売店で買ってきたから。」
そうやって優しく微笑む快斗のお母さんを見ると、いつもとは違う光景に
…また、現実を思い出される。
「あの、お金は…」
「え?そんなの気にしないでよ。
食べよう?」
「……はい、ありがとうございます。」
おばさん…本当はおばさんが一番辛いはずなのに、変わらず明るくて…
……私のせいなのに、私にまで優しくて…
その優しさが、私の心に沁みてきて
なんだか、涙が出ちゃいそうだった。
「桜子さっさと片付けろよー。飯食えないじゃーん。」
「あ、ごめん」
オチケンさんにいわれ、せっせと勉強道具を片付けた。
たった一時間半ちょい。
休憩も挟んだら一時間。
それだけの時間だったのに、私はもうテスト範囲のほとんどを理解した。
「……あとは数学だけ、か。」
ね、快斗。
テストで勝負するんでしょ?
だったら早く、目を覚ましてね。
「いただきまーす!」
そうやって元気にご飯を食べるみんなをみて、私も手を合わせた。
「いただきます」━━ガタンっ、
だけど、荒々しく開けられたドアによって私の声はかき消され、ここにいる全員がドアを見つめた。
「誰。」
「さぁ?」
黒崎くんと隼斗さんのそんな会話が耳を素通りするかのように、私は体が硬直した。
「桜子…」
「……お母さん…」
なぜか、私のお母さんがそこにいたから。