暴走族に恋をする。
「うちの息子は確かによくできた人間ではないかもしれません。
見た目もチャラチャラしてて…なにをやるにも適当で、警察のお世話になったこともあります。
……そんな快斗が、初めて桜子さんを連れてきたとき、本当にびっくりしました。
こんなにきれいで、礼儀がしっかりしていて、食事の時の姿勢や食べ方が綺麗で、どこに出しても恥ずかしくないようなお嬢さんが快斗の彼女だなんて…
こんな完璧な桜子さんを育てたご両親と一度お会いしたかったんです。」
おばさんは、優しく微笑みながらそういった。
快斗を見る目、私を見る目が本当に暖かかった。
「不思議ではありませんか?
どうしてこんな完璧な桜子さんが、うちの快斗の彼女で、そこにいる黒崎くんたちのお友達なのかを。」
「そんなの、どうせ理由があるんでしょう。
もともと桜子はこういう不良が嫌いなんですから。」
……お母さんも、ね…
「だから不思議なんです。……第三者の目からしたらね。
…快斗は、そりゃろくな人間ではありません。
何回警察に迎えにいったか、私も数えられませんから。
……でも、そんな快斗でも優しさはあるんです。
その子達もそうです。
大切なものは、とても大切にする子たちです。
大切なもののためなら、自分を犠牲にしてでも守れる子たちです。
……そしてそれは、桜子さんも一緒です。
塾をサボらせたのは息子のせいですので謝罪します。
申し訳ありません。
でも桜子さんがここに残りたいと、快斗が目を覚ますのを待ちたいと願った。私はそれを尊重しました。
確かに勉強は大切です。
それでも、勉強だけがすべてじゃない。
命の重さ、尊さ、大切さ、そして優しさ
それは塾では学べない、大切なことではないでしょうか?」
「学生の本業は勉強であり、命の大切さを学んでる余裕などありません。
女ならなおさら、出産でそれらを学ぶことができます。
ましてや…テストの前にそんなこと言ってる場合ですか?
桜子がここでお宅の息子さんが目覚めるのを待ってたら、早く目を覚ますのですか?
違いますよね。
こんなところで、そんな人たちと遊んでる場合じゃないんです。
うちの娘を巻き込まないでください。
桜子、行くわよ。」
え……
「ちょ…待ってよ!」
突然掴まれた腕を私は、必死に振りほどいた。