暴走族に恋をする。



そうやってうつ向きながら話すお母さんは、私の知ってるお母さんではなくなっていた。


「ちゃんと見てあげてください。
あいつは、あなたに愛されたくて毎日必死に生きてるんです
って言われて…

知り合ってまだ間もないあの子の方が、私よりも桜子のことをちゃんとわかってて、情けなくなったの。

私は、桜子のなにを見てきたんだろうって…」


お母さんはそういって、肘を机に立て、手で目をおさえるお母さんを見ていたら、私までもが涙が出てきそうになる。


「…ごめんなさい、私…桜子を苦しめてきたわね。
本当はおしゃれが好きなこと、勉強が嫌いなこと、自分に厳しいこと、
そんな桜子のことも理解しようともせず、秀一のことでせめて、秀一の代わりのように扱っていた。
情けない事実を、認めるしかないわ。

自分の意見ばかりを、桜子に押し付けていた。」


「……それでも、私はお母さんに感謝をしている。」


初めて向けられた私宛のお母さんからの言葉に、私も答えるようにお母さん宛に言葉を贈った。


「快斗のご両親にね、何回も言われるの。
快斗はいいお嬢さんを見つけたな、って…

礼儀、身だしなみ、勉強、
私はすべてを厳しく言われてきた。
だからこそ、今の私があるんだって…

人として認められるようになったのは、お母さんがずっと厳しくしてきてくれたから。
だから…ありがとう。」


この命も、孤独も、痛みも、
お母さんがいなきゃなにもなかった。

それがあったからこそ、私はきっと今
強く立てているんだって…


「…今までずっと一人で立とうと頑張ってきた。
だけど…それを崩したのは快斗だった。
私は快斗を好きになって、快斗に支えられて生きてきた。

…私も快斗を支えられる人間になりたい。

だから…これからも、厳しいご指導よろしくお願いします。」


間違いなんかなかった
決して、間違いじゃなかったんだ。

だから後悔なんかしたくないし、してほしくない。

今までの経験をもとに、これから成長していきたいから。
お母さんと、お父さんと一緒に。


「…明日からは、早く帰ってきなさい。」


「………え?」


「一緒に、ご飯を食べましょう。」


「…うん。
わかった、じゃあ明日は早めに帰ります。」


0から始める、なんて無理だけど…
それでも少しずつ、少しずつ私たちなりに歩み寄っていきたい。

辛いときに辛いと言えるように。

お母さんの笑顔は、もう二度と取り戻せないかもって思ってた。
だけど、みんなに支えられて
私はまた、信じてみようと思えるようになったよ。


「いい?私は桜子をちゃんと見ていくと決めたけど、決して、甘やかそうとは考えていないからね?
テストは学年10位以内。
遅く帰ることや無断外泊、羽目を外しすぎる行動は一切禁止です。

わかった?」


「はい。」


それが、私のためだってちゃんとわかってるから。



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