暴走族に恋をする。
「あ、そうだ快斗。
昨日、お母さんにいろいろ言ってくれたんでしょ?
ありがとね。」
「あー…聞いたか。
なんか余計なこといったかなと思って」
「そんなことないよ。
それもあってさ、昨日ちゃんとお母さんと話したの。
なんていうか…やっとちゃん親子になれた気がする。」
普通の…よくある親子関係に、私たちはやっとなれた気がするよ。
「……そか、よかったね。」
「うん、本当にありがとう。」
もう私を見る快斗の表情が優しすぎて、私はその笑顔に溶けてしまいそうだった。
甘すぎるその表情は私にしか見せない、プレミア物だ。
「ところでさ、黒崎くんたちはあの工場行ってるの?」
「あぁ、行ってる。今日もあそこ集合だったし。」
「蓮は総長だしなー。
しかも快斗事故ってからまじで無免運転禁止にしちゃって、やめたいやつはやめればみたいな姿勢だからこの数日で抜けたやつも多い。
ここらへんで最強だったはずのブラスパも、今じゃ人数が超少ない族だよ。」
なんて、隼斗さんはつまらそうにそう言った。
「なんか、なんで俺族やってんのかなーと迷走中。
別に族入んなくても、ただの不良でよかったんじゃないかとさえ思えてくる。」
そういった黒崎くんからはいつもの覇気が、全く感じられなかった。
「……蓮、辞めんの?」
「そしたら下のやつらも自由だろ。
なんつーか、やり方が面倒になってきた。
……タバコ吸ってくるわ。」
黒崎くんはそういって、病室から出ていった。
「…あ、私これ返してくるね。
みんなゆっくり食べてて。」
それを追いかけるように、私も包丁たちをもって病室を出た。