暴走族に恋をする。
「触らないでください。」
「昨日隼斗が言ったことなら謝るから」
「謝ればいいというものでもないですし、なぜあなたが謝るんですか?
同じ考えだからですか」
「違うよ!」
「………とにかく、私はもうあなた方と関わるつもりはありません。
話しかけないでください。
…早く手を離してください。」
「離せない。」
「………どうして私に構うんですか?
いつもいつも。」
「寂しくて寂しくて仕方ないくせに、いつも強がってるから。」
「え……?」
「入学式の日にさくらを抱き上げたときはすごく優しい顔をして笑ってたのに、公園に置くときは全然笑ってなかった。
弱くて、こんなことしかできない自分に嫌気をさした顔をしてた。」
「………だからって、あなたには関係ないでしょ。」
「俺も一緒だから。
俺にはあのとき、さくらを助けようなんて考えてなかった。
あのとき、桜子ちゃんが助けたから、俺はそのあとさくらを拾った。
俺は俺にできることをした。
桜子ちゃんは桜子ちゃんにできることをした。
桜子ちゃんには俺にはない部分があるから。
自分にはできないことを他人に求めたっていいんじゃないの?
誰かと自分を足して1になったっていいんじゃないの?
全部一人でなんとかできなくても。
………俺も、隼斗も蓮もオチケンもゆっきーも超正しいことを言ってる桜子ちゃんとは真逆だからさ。
桜子ちゃんみたいな子を求めてたりするんだよね。
俺らも強がって強がって強がってるから。
桜子ちゃんと一緒。
自分が崩れ落ちないように、必死に強がってるんでしょ?
俺ら暴走族だし隼斗もあんなんだけどさ、桜子ちゃんにはない部分を俺らは持ってる。
だからさ、たまには俺らみたいなのといるのもいいんじゃないかなーって…
崩れ落ちないように強がってても、一人じゃ絶対いつか崩壊するよ。
人間だって、二本の足で立ってるんだから。」
「………たとえそうだとしても、その相手があなたたちである必要はない。」
「じゃあ、他に誰がいるの?」
「涼介だっています。」
「涼介じゃむり。
だってさ、涼介でいいなら
今桜子ちゃんがそんな寂しそうな顔、してないはずじゃん。
………昨日さくらを抱いてた時の桜子ちゃんは、今まで見たこともないくらい優しい顔をしてた。
隼斗を見て笑ってる桜子ちゃんの笑顔は今まででいちばん楽しそうだった。
蓮に勉強を教わってる桜子ちゃんは今までいちばん真剣だった。
…俺らだから、だよ。きっと。
昨日、俺らと一緒にいた桜子ちゃんが、今まででいちばん人間らしかった。」
大津くんの言ってることが胸にグサグサと刺さってきて、顔をあげるもできないくらい、その言葉が痛くて…
痛くて痛くて、涙が出そうだった。