暴走族に恋をする。
「あのー…私お金とかないんですけど…」
「ん?大丈夫だよ。
快斗から取るから。
それよりこっちへどうぞ。」
なんでここに来ているのか私には訳がわからなかったけど、言われるがままついていくと個室だった。
「家は厳しい方?」
「え?あ、はい。
かなり厳しいと思います。
勉強も女としての身だしなみや仕草もかなり厳しいです。
私は勉強と言葉遣いだけを気を付けているので、よく野暮ったいって言われます。
あか抜けなさい、とよく言われます。」
今日も適当に髪の毛をとかしただけ。
服もジーンズに適当なブラウスにスニーカー。
お母さんにうるさく言われて当然なんだよね。
「ふーん、なるほどね。了解。」
お兄さんはそういうと私を椅子に座らせ、髪の毛をとかし、背もたれを倒した。
「え、えと…」
なんなんだ、この状況は…
「大丈夫、俺を信じといてよ。」
い、いや…そういう問題じゃなくて………
この兄弟は説明するということをしないのか…?
「ガーゼのせるよー。」
………よくわからないまま、私の視線は遮られてしまった。
でも……美容室なんて何年ぶりだろう…
人の手で洗われるこの感覚や、普段とは違うシャンプーの香りがなんだか懐かしい。
…お兄ちゃんが亡くなってからは初めてかもしれない…