群青色、君の色。
元カレとのつまらない話はさておき、退屈な授業を終え、家に帰ってダラダラする。
はずだったのに。
なぜだろう。
私は今、道場への道をダラダラ歩いている。
遡ること三十分。
「こなつ、道場行かないの?」
母親に声をかけられたけど、
「だって雨じゃん」
堂々と返事をした。
しかし。
「試合前だよ、歩いていってきなさい」
母親には逆らえない。とてつもなくめんどくさい人なのだ。
「ああ、もう着いちゃった」
絶望に打ちひしがれながらも、ドアを開ける。
「こんばんは〜」
明らかにやる気がなさそうに声をかけると、子供の稽古を見ていたおじさんが返事をしてくれた。
今は、六時三十五分。
大人の稽古ーーー中学生以上の部ーーーが始まるまで、あと二十五分ある。
着替える前にお手洗いにでも行っておこうか、と思ったとき、
「こんばんは」
玄関のドアがガラガラと開いて、爽やかな声が聞こえた。
剣道場に入ってきたのは、難波翔平さん。
彼は三ヶ月ほど前にこの道場に入門したのだが、大学でも剣道をしていたそうで、めちゃくちゃ上手い。
「こんばんは」
返事をしたけれど、声が震えた。理由はわからない。