君の涙の理由を俺は知らない。
風呂から出るとなゆがいるリビングへと向かう。
濡れた髪をタオルで拭きながら、空いている方の手でドアを開ける。
「あ、ドライヤー使う?」
「んー、いい。」
なゆはソファに座らず、その前の床に座って髪を乾かしていた様だ。
毛先がまだ少し濡れている。
「なんか飲む?水かお茶しかねぇけど。」
「じゃあ、お茶。」
「わかった。」
夏とはいえ濡れたから寒いだろう。
あったかいお茶を用意し、なゆに渡した。
「へへ、あったかいね。」
体育座りをし、両手でコップを包むように持っている。
猫舌なのか息をふうふうして飲んでいた。
ソファに座って俺もお茶を飲む。
「TV、なんか見る?」
「んー。」
特にすることもないので取り敢えずTVを付けた。
返ってくる曖昧な返事に、適当にバラエティー番組にした。
それは歌を歌って点を競うという番組で、今旬の人達が沢山でていた。
どんなものかと見入る俺に、なゆはコップをソファの前の机において、俺の右隣へと腰を下ろす。
その距離は近く、肩が当たっていた。
高まる鼓動の音が聞こえてしまいそうで、気が気でない。
「慰めて。」
頭をコテンと俺の肩に預けた。
髪から同じシャンプーの匂いが鼻をくすぐる。
「何して欲しい?」
慰めろと言われても具体的に何をしたらいいのかわからない。
少しの沈黙をおいて、なゆは答えた。
「抱きしめて。寝るまで傍にいて。」
頭はそのままで俺の右腕に抱きつき、甘えた口調でそう言う。
腕から伝わる胸の感触、その吐息一つが、理性をまた壊していく。
覗き込むようにしてなゆにキスをした。
目を閉じて素直に応じるから、止まらなくなる。
「これじゃ寝れないじゃん。」
「うん、寝ないでいいよ。ずっと抱きしめて傍にいるから。」
なゆは顔を赤くして正面から抱きついてきた。
その小さな体は俺の腕の中にスッポリ収まる。
「キザ。」
「うっさいわ。」
ギューって強く抱きしめると同じくらいギューって抱きしめてくれる。
でも段々、眠くなってきたのか力が弱くなってきた。
「あー、眠くなってきた。」
そう言いながら俺に体を預けてくれているのが何か嬉しくて「寝させるもんか。」って冗談交じりに頬をつねる。
「いひゃい。」
変な顔。
「可愛すぎ。」
なのに、それですらなんでこんなに可愛いく思うのかな。
なゆの首元に頭を埋めた。
「ちょ、冷たいっ。」
髪がまだ濡れているからか。
なゆは離れようとするから、その腰に手を回す。
暫くそのままでいると寝息が聞こえ、まさかと思い顔を上げてなゆを見ると寝ていた。
「まじかよ。」
仕方ないからベッドまで運び寝かせた。
俺の気もしらないで……。
こっちはいろいろ頑張ってるんだぞ。
あーあ、…俺も寝よっかな。
離れようとすると裾を掴まれた。