恋は世界の片隅に【短編集】
「ふー…あちぃー」
昼休みが終わる数分前。
聞き覚えのある声が聞こえてきて、あたしは思わず顔を伏せた。
「ハルチカーッ!おかえりぃ。サッカー楽しかったぁ?」
「汗凄いよ。はい、タオル」
案の定、女の子たちは黄色い声を出しながら、あの人の元へとかけ寄っていく。
笑顔でタオルを受け取る姿は、正直見たくなかった。
あたしは俯いたまま、昼休みが終わるのをひたすら待ち続ける。
――今、女の子たちに囲まれている人、春くんは、あたしの彼氏だ。
本名、中江春哉。
みんなからは、ハルとかハルチカって呼ばれてる。
ルックスが良く、クラスの盛り上げ役でノリが良いからか、男子からも女子からも人気がある。
だけど、それが厄介なんだ。