恋は世界の片隅に【短編集】
「…って、何でホテルー!?」
「だって、人がいないとこが良いって莉沙が……」
泣きながら訴えるわたしに、ユキは困ったように頭を掻く。
だからって、
だからって、
ここラブホテルですよ!?
分かってるんですか、雪哉さん!
「…あー、なんか空気読めなくてごめん!」
「ううん…」
ユキに下心なんか無いことぐらい、本当はちゃんと分かってるよ。
本気でわたしのことを心配してくれていることも。
「…莉沙。何があったか俺に話してよ?な?」
──ユキは優しい。
昔からそうだったね。
誰かが困ってると、まるで自分のことのように真剣に考えてくれる。
「…ユキ、わたしね、フラれちゃったんだ……」
ユキに余計な心配をかけたくなかったけど、今日ばっかりはどうしても甘えたかった。
一人になるのが怖かった。