*オレを嫌いなキミが好き。*日本一(ピュア)の総長 × 日本一暴走族嫌い女子*
空が暗くなり、さっきの喧騒がすっかり落ち着いたことを確認して、ふたりで歩き始めた。
頭上には、星ひとつ見えない澱んだ空が広がってる。
千歳はあれきり口をつぐんだままだ。
絶対なにかを言いかけたのに、今はもう貝よりも硬く口も心も閉ざしている。
「危ないから家送るよ」
「………………大丈夫」
「送るって。……ううん、送らせてよ、一緒に、いたいから、…………少しでも、長く…………」
不器用で口下手なオレは、こんなとき何をどう言ったらいいのか分からない。
伝えたいことや、訊きたいことは、全身に渦巻いてるのに。
「……竜憧……くん……」
また沈黙が訪れると、千歳の足が止まった。
「…………あ、あたし…………私……、ほんとは竜憧くんのこと…………でも竜憧くんてなんか…………」
「…………なんか?」
「壁がある。見えないけど、壁がある」