*オレを嫌いなキミが好き。*日本一(ピュア)の総長 × 日本一暴走族嫌い女子*


オレが黙っていると、訪問者ふたりは目を合わせてニヤリとほくそ笑んだ。

"魔陀羅"のリーダーのオレ、敵対する"雷怒"の頭・タカシ、そして"族狩り"のトウタ。

立場的にはそれぞれ対立関係なんだが、密かに奇妙な(腐れ)縁で繋がっている。

オレは部下たちの前では"総長キャラ"だが、この二人には素の自分でいられる。そんな存在。

そしてこの関係は、魔陀羅と雷怒のメンバーには内緒だ。





「電気もつけねェで辛気臭ェな。女にでもフラれた?」

トウタはオレより一つ下のクセに、悠々タバコをふかしながら玄関の框をあがり、当たり前に冷蔵庫を開けた。

「オヤジは?」

「夜勤」

「酒ねーのかよ」

「悪かったな……どーせ……」

「は?」

「だからオレのことはほっといてくれよ!」

オレがふて腐れるや、タカシとトウタは同時に吹いた。

「なに厨二みたいなこと言ってンだよ」

「まじフラれたのか?可哀想に」

「可哀想だな」

可哀想と連呼しつつ、勿論ふたりはニヤニヤ笑ってる。

「帰れ」

「その様子だとなんも食ってねーんだろ?なんか作ってやるよ」

気が滅入ったオレをタカシは宥め、パチンと電気をつけた。

タカシはトウタよりかは幾分まともだ。多少は人間が出来ている。
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