*オレを嫌いなキミが好き。*日本一(ピュア)の総長 × 日本一暴走族嫌い女子*
「…………あと3分……」
カウントダウンが進むにつれて、ますます胸の動悸が強くなる。
「エンジン切れ」
そう一言、周囲に指示する。すると獣のように唸っていたバイク達が次々沈黙し、あっという間に静寂が支配した。
先ほどとは打ってかわって、虫の羽音まで聞こえそうだ。
今度は沈黙がうるさい。
少しだけ欠けた月に、雲がかかる。
口を利く者もいなくなった。
不安は払拭どころか、増すばかりだ。
やがて、湿った空気のなかに微かにエンジンの唸る音を感じた。
「…………………………ッ」
はじめは小さく、だが徐々にその音は強く激しくなって行く。
「来たか……」
周りの仲間たちもそれに気づいたらしい。そして今か今かと舌舐めずりしそうな顔で待ち構える。
魔陀羅は血の気の荒い連中の集まりだ。負けることは考えられない。