*オレを嫌いなキミが好き。*日本一(ピュア)の総長 × 日本一暴走族嫌い女子*
声が一瞬で別人になった。
驚いて、思わずシャープな横顔をパッと見上げてしまった。
「…………ああ。………ああ。………いや、構わねー。………………ア?それで?………」
いったいこれはナニ?
話し方といい、声のトーンといい、いつもの竜憧くんとは全然違う。目を閉じたら誰か分からない。
声だけじゃなく、険しい横顔も…………。
でも演技をしているって感じでもない。例えていうなら一瞬で人格が変わったみたい。
あなたどちら様!?状態だよ。
それに正直言うとちょっと怖い…………。
そしてなにより、話の内容が気になった。
街の喧騒に消され、相手の声は聞こえないけど、何となく緊迫したものであることは分かる。
そしてきっと"族関係"のひとだってことも確信した。
電話はほとんどかけてきた人が喋って、竜憧くんはほぼ相槌を打っているだけだ。
それでも、会話の主導権は竜憧くんにあるんだって感じさせるのに充分で。
「……分かった。すぐ行く」
そして一分にも満たない通話は、彼のその言葉で唐突に終わった。