*オレを嫌いなキミが好き。*日本一(ピュア)の総長 × 日本一暴走族嫌い女子*
「……あ、暑いよね」
「暑い、暑い」
窓から入るぬるい風を感じながら、くすぐったいような、なんともなぎこちない空気が流れる。
この空気がずっと続いてほしいような、はやく終わってほしいような不思議な緊張感だった。
「ごめんね、うちクーラーなくて。暑いよな」
「ううん!いいの!」
彼が申し訳なさそうな顔をするから、慌てて首を横に振った。
「そうだ、腹減ってない?ゆうべクッキー焼いておいたんだ」
「うん、ありが…………え!?竜憧くんが作ったの!?」
びっくりして声が裏返っちゃった。
すると、彼は照れて髪をかきながら、
「うちほら台所なんて基本ビールか焼酎しかないからさ。あ、ていっても飲むのは親父だけどね。でもそれだともし千歳が来たとき困るでしょ?」
そんな風にもじもじぎこちなく答えた。それを聞いて目を見張る。
「まさかスイーツ作る趣味あったの!?」
「いや、ないけど……」