*オレを嫌いなキミが好き。*日本一(ピュア)の総長 × 日本一暴走族嫌い女子*
どこからともなく、ずっとバイクのエンジン音が夏の夜空に響いている。
ブンブン煩い、ハエみたい。
暴走族の集会なんか、だんだんどうでも良くなってきた。
元々"あのバイクの男"を探したくて、ただそれだけで小海の話に乗ってしまったわけだけど、考えたら見つけられるわけない。
今年であれからもう7年になる。7年間、何の手懸かりもないんだから。
こうして改造されたバイクのエンジン音を聞いていると、忘れたくても忘れられない辛い記憶が、フラッシュバックする。
お腹の奥から細胞が壊死するようだ。ヒンヤリ冷たい疼痛を感じた。
堪りかねて、ねえ帰ろっか?と言おうとしたものの、ほんの少し小海の方が早かった。
「うわやべ!今夜幹部らも出てるくさい!」
「…………"患部"?」
「"か・ん・ぶ"!魔陀羅の幹部、要するに中心メンバー!」
自分のスマホを弄っていた小海が、興奮ぎみにいきなり叫んだ。