*オレを嫌いなキミが好き。*日本一(ピュア)の総長 × 日本一暴走族嫌い女子*
「千歳!」
放課後、時刻は3時15分 ────
リュックを手にしたさっちが私の机めがけて駆けてきた。
「竜憧くん今日も来なかったね」
「……え?、あ、うん。そーだね」
じーっと竜憧くんの机を見つめていたけど、慌てて顔を正面に戻す。
「もォ、ちぃとぉせぇ~。気になるんでしょ?」
「別に」
「さみしぃんでしょぉ?」
「別に!」
なるべく素っ気なく言って、私も立ち上がった。
「さーて帰ろ」
「あ、待って待って!ねー、ほんとのこと言いなよ、竜憧くん気になるんでしょー?」
さっちは"お見通し"って顔で、私の腕に、自分の腕を絡めてきた。
「…………」
ほんとのこと言うと、ぜんっぜんっ気にならない…………こともないこともないけど…………。
いや、ほんとのほんとを言うと、ずっと頭の片隅に竜憧くんの顔が、おぼろげにぽわーんと浮いている。
そして、不思議なんだけど、ムリに消そうとするほど彼の輪郭は濃くなる。
あの、いつもなんとなく"何か"を伝えたそうな瞳が…………。