未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「あ、そうだ。これ秘書課の斎藤さんに渡して来てくれる?」
「え?私ですか?」
平野課長はわざとらしくぽんっと手を叩くと、茶封筒を無理矢理押し付けてきた。
絶対に怪しい。
だっていつもは私に頼んで来ない。
課長はいつも課長の専任アシスタントでもあり営業一課アシスタント業務主任のベテラン川之江さんにお願いしてる。
川之江さんから私達に指示があることはあるけど、課長が直接言ってくるなんて入社以来初めてだ。
『あ、そうだ』とかかなりわざとくさいし。
あれは絶対に演技。
葉山達と私を遭遇させようとしてるに違いない。
反応を見て楽しもうとしてるんだ。
「西條さん、もちろん行ってきてくれるよね?」
ニコニコ顔でそう言う課長。
笑ってるけど圧力が凄い……
まさか断わったりしねぇよな、って心の声が聞こえてきて思わず唾を飲んだ。
罠だとわかっていても、新入社員が直属の上司の命令を断るなんて……やっぱり私には出来ない。
「わかりました。すぐに行ってきます」
くそぅ!と思いながらも、茶封筒を受け取って席を立つ。
「ごゆっくり〜」とひらひら手を振る課長を一瞥すると、急いで秘書課に向かった。
曲がり角ごとに忍者のように隠れては先を確認して進む。
そうだよ。
こうやって注意を払ってれば二人との遭遇を避けられる。
それでとっとと届けて早く一課に戻ろう。
倉本さんがどんな人なのか気にはなるけど、課長の罠には絶対に嵌らないんだから。
階段に差し掛かると、上から声が聞こえないか耳を澄ます。
最上階の二十階には社長室と副社長室、その下の十九階にはその他の役員室。
十八階には秘書課と会議室や応接室があり、十七階には我が営業部がある。
十八階にある会議室も応接室も役員以外は使用しないため、営業部より上のフロアに私みたいな平社員が足を踏み入れることはほとんどない。
そのため、十七階より上に行く場合は社員は階段を使うという暗黙のルールがあって、エレベーターに乗れるのは役員と動きを共にしてる秘書課だけだ。
「え?私ですか?」
平野課長はわざとらしくぽんっと手を叩くと、茶封筒を無理矢理押し付けてきた。
絶対に怪しい。
だっていつもは私に頼んで来ない。
課長はいつも課長の専任アシスタントでもあり営業一課アシスタント業務主任のベテラン川之江さんにお願いしてる。
川之江さんから私達に指示があることはあるけど、課長が直接言ってくるなんて入社以来初めてだ。
『あ、そうだ』とかかなりわざとくさいし。
あれは絶対に演技。
葉山達と私を遭遇させようとしてるに違いない。
反応を見て楽しもうとしてるんだ。
「西條さん、もちろん行ってきてくれるよね?」
ニコニコ顔でそう言う課長。
笑ってるけど圧力が凄い……
まさか断わったりしねぇよな、って心の声が聞こえてきて思わず唾を飲んだ。
罠だとわかっていても、新入社員が直属の上司の命令を断るなんて……やっぱり私には出来ない。
「わかりました。すぐに行ってきます」
くそぅ!と思いながらも、茶封筒を受け取って席を立つ。
「ごゆっくり〜」とひらひら手を振る課長を一瞥すると、急いで秘書課に向かった。
曲がり角ごとに忍者のように隠れては先を確認して進む。
そうだよ。
こうやって注意を払ってれば二人との遭遇を避けられる。
それでとっとと届けて早く一課に戻ろう。
倉本さんがどんな人なのか気にはなるけど、課長の罠には絶対に嵌らないんだから。
階段に差し掛かると、上から声が聞こえないか耳を澄ます。
最上階の二十階には社長室と副社長室、その下の十九階にはその他の役員室。
十八階には秘書課と会議室や応接室があり、十七階には我が営業部がある。
十八階にある会議室も応接室も役員以外は使用しないため、営業部より上のフロアに私みたいな平社員が足を踏み入れることはほとんどない。
そのため、十七階より上に行く場合は社員は階段を使うという暗黙のルールがあって、エレベーターに乗れるのは役員と動きを共にしてる秘書課だけだ。