未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
だけど、うるさかった心臓はすぐに凍りついた。


私の目は葉山の後ろから出てきた小柄の女性に釘付け。

動揺からなのか、嫉妬からなのか。
一瞬、頭が真っ白になった。


「打ち合わせは終わり?」

「はい。葉山さんが担当だとスムーズに進むので助かってます。こちらは?」


倉本さんが私に気付き、目をパチクリさせた。

吸い込まれそうなほど透明な色素の薄い瞳。
ピンク色の艶々な唇。
きめ細かい白い肌。

微笑んだ顔、きょとんとした顔。その仕草。

この可愛らしい女性が倉本さん……

葉山が一生一緒にいたいと思った人……?


「西條?」


葉山の声に、ハッと我に返る。


「えっと、営業一課に配属されました新入社員の西條綾音です。よろしくお願いします」

「私は秘書課の倉本紗枝です。こちらこそよろしくお願いします」


ペコッと頭を下げる動作ですら可愛い。

守りたくなるようなタイプの女性。
ガサツで男っぽい性格の私とは大違いだ。


そして、その左手の薬指に光る物を見つけた時、目の前が真っ暗になった。


ヤバい……

私、自分が思った以上にショックを受けてる。


婚約者がいるって聞いてもそこまで動揺しなかったのに。

二人が一緒にいるのを目の当たりにして、泣きそうになってる……


「あの……私、課長にもう一つやれって言われてることがありまして……その、急ぐのでこれで失礼します」


誰の目も見れなかった。

素早くお辞儀をすると、足早に階段に向かう。


斎藤さんや倉本さんには失礼な態度だったかもしれない。

葉山の「え?おいっ」と慌てた声も聞こえる。


だけど、今止まって振り返って二人の姿を見たら、きっと泣いちゃうから。


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