未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
隠れなきゃ…でも、一体何処に?

すぐ近くにある図工室は鍵が締まってる。

体育館の方へ行こうにも渡り廊下からは離れてしまって、走っても間に合わない。

階段から降りてくるんだから当然そっちには行けないし、もう絶体絶命だ。


一人であたふたしてると、「こっち」とまたもや強引に手を引かれて、階段下の死角に引き摺り込まれた。


背中に冷たい壁が当たる。

顔の横に手を突かれ、目の前には葉山の端正な顔。

くっきりと浮き出た喉仏がゴクリと上下し、葉山の緊張が目に見えた。


心臓が口から出そうだ。

これは声の主達にバレたらどうしようっていう緊張からじゃない。

葉山が近い。
抱き締められてるわけじゃないのに、そう錯覚するほど葉山の温もりと匂い、呼吸を感じる。

頭に響くのは私の鼓動なのか、それとも葉山の鼓動なのか。


葉山は足音に耳を澄ませながら、廊下の様子を窺うように目を凝らした。


早く…早く通り過ぎてよ……っ!

緊張がピークに達してクラクラしてくる。
もう立ってるのもやっとだ。


「悪い」


そう小声で言うと、葉山は身を隠すように私を抱き寄せた。


「あの子は絶対葉山好きだよねー」

「葉山はどう思ってんのかな?まさか葉山も好きとか?」

「まさか‼︎葉山はただの後輩にしか見てないって。っていうか、万が一二人が付き合ったら葉山のファンが黙ってないんじゃない?」

「あー言えてる。過激なファンが多いからね」


足音が私達の真上を通り遠ざかっていく。
そして、何も聞こえなくなった。



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