未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「勘違いでもなさそうだな」


葉山はふっと口元を緩めて言った。


「勘違いってどういうこと?」


葉山の“勘違い”って何?

何をどう勘違いして、何でこのタイミングで“そうでもなさそう”って判断したの?


ついさっきまで険しい顔してたのに、どこか嬉しそうな表情にますます意味がわからなくなる。


「こっちの話。それよりさっきの話の続き。もう逃げたり隠れたりすんな」


「わかったか?」と、子供を諭すように私の頭をぽんっと撫でる葉山。


もうどうして逃げるのか聞かないんだ。

何故か穏やかになった表情を見てると、怒りを通り越して呆れたとかそんな感じでもなさそう。

ほっとしつつも、少し罪悪感が残る。


結局手紙も渡せてない。

このままでいいのかな…

私の態度で嫌な気持ちにさせたことには変わりはないんだから、ちゃんと謝るべきじゃない?


「あのね、これ…」


さっき鞄に入れそびれた手紙をおずおずと出す。


「さっき鞄を勝手に開けようとしてごめんなさい。これ入れようとしてたの」

「手紙?」


葉山はそれを受け取ると、すぐに開いて読み始めた。


自分が書いた手紙を目の前で読まれるのってかなり恥ずかしいかも。

変なことは書いてないのに、心まで読まれてる気になるのは何でだろう。


葉山が読み終わるまでの僅かな沈黙。

さっき抱き締められた時ほどじゃないけど、緊張してそわそわする。


「ふ〜ん。なるほどね…」


葉山は手紙を折り畳み直しながら一人で納得したように呟くと、私を見据えた。


「なぁ、文通しないか?」

「文通?」

「そ。まだ俺とまともに話せないみたいだし、リハビリみたいな感覚で」



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