未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「次は俺が書く番だな」


葉山はニカッと笑うと、階段下から出て廊下を端まで見渡した。


「俺、先に戻るわ。お前はその顔収まったら出てこい。女子の部長にはうまく言っといてやるから」

「その顔って?」

「林檎みたいになってる」


へっ…?
それって、顔が真っ赤ってこと⁉︎


すぐに頬に両手を当てる。
冷えた指先に伝わる頬の熱。


これ…私、相当顔が赤かったんだ。

それをずっとずーっと葉山に見られてたなんてっ……


葉山はクスッと笑うと、「じゃあな」とご機嫌そうに帰っていく。


もう最悪……

葉山、笑ってた。
絶対面白い変な顔してたんだ。


でも、何故かわからないけどもう怒ってないみたいだし。

思いがけず葉山と文通が出来るようになった。

これってまだ私にも望みがあるってこと?


「力抜けちゃった……」


壁に凭れたまま、へなへなとその場に座り込む。


凄く凄く嬉しくて、胸の中だけでこの気持ちを抑えておけない。

大きな声で叫びたい。
思いっきり体を動かして発散させたい。

そんな衝動に駆られた。


コツンと後頭部を壁につけて、「はあぁ…」と息を吐く。

まさかこんな展開になるなんて……
勇気を出して手紙を渡して良かった。


もうそろそろ部活に行かないとヤバイ。

だけど、あと1分でいいから幸せな気持ちを噛み締めたい。


結局、私は10分間、そこで昂った気が収まるのを待った。





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