未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
◇◇


「あ!あった!」


飲み屋を出たあと花梨と別れると、私は一人暮らしのアパートに急いで帰った。

バタバタと靴を脱ぎ鞄をベッドの上に投げると、すぐに押し入れにしまったままのダンボールを引きずり出す。

ここに引っ越してきたのは六年前。
大学を卒業してすぐだ。

それ以来、このダンボールは一度も開けておらずガムテープが貼られたまま。

ダンボールの表面にはハートマークが書いてある。

ガムテープを剥がして開けると中にはアルバムやら写真、思い出の品が入っていて、私はそれを丁寧によけてから某テーマパークのお菓子が入っていた缶を取り出した。


テーブルの上に置き、ドキドキしながら蓋に手を掛ける。

これを開けるのは15年振りだ。
“あの日”以来、捨てるに捨てられずこの缶に封印した。


「懐かし…」


蓋を開けると、中には数通の手紙。

どれも大学ノートを切って書いたものだ。


缶を逆さにして全て出し、順番に開いていく。


「ふふ。何これ」


今見ると、中学生の子供が書いた馬鹿馬鹿しい内容ばかりで面白い。

当時はこの手紙の数々が私の宝物で、貰うたびに飛び跳ねるぐらい喜んでたっけ。


今の学生は手紙なんて書かないんだろうな。
スマホが普及して、学生でも一人一台は持っているこの時代。

手紙なんて書かなくてもラインやSNSで気軽にやり取り出来る。

でも私が中学生の頃、携帯は大人の持ち物で子供で持っている人なんてほとんどいなかった。

だから学生時代は手紙や交換日記が流行り、可愛いメモ帳やノート、シールを集める女子が多かった。

私も何冊もメモ帳を買ってシールで派手にして、花梨や他の友達と意味もなく手紙を渡しっこしてたな。


「あ…っ!」


これは確か初めて貰った手紙だ。

唯一、ちゃんとした便箋に書かれたやつで、ずっと肌身離さず持ってたから他のよりもヨレヨレになってる。


彼なりに綺麗に書いたつもりなんだと思う。

他の手紙より字が硬くて緊張が伝わってきた。



「綾音へ。初めての手紙で少し緊張してるーー…」


私は15年前を思い出しながら、手紙を読み始めた。



◇◇



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