未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
半年前。


「結婚っ‼︎⁉︎」


豪快にビールを喉に流し込んでいた内藤花梨は、私の話を聞くやいなやガンッと大ジョッキをテーブルに置きながら大声を上げた。


「シーッ‼︎声大きいってば」


立てた人差し指を口元に当てて小声で言うのは、私、西條綾音。

つい先日28歳になったばかり。


「馬鹿ね!静かにしてられるわけないでしょ‼︎ホントに⁉︎ホントにホントに結婚するの⁉︎」


花梨は眉を寄せながら乗り出して聞いてくる。

お酒が入ってるせいか、予想以上に喜んでくれてるのか。

いつもよりオーバーな花梨に圧倒されながらも「う、うん」と何度も小さく頷いて見せた。


「そっか……そっか」


私の答えを聞いた途端、力が抜けたようにストンと椅子に座り直す花梨。

その目にはあっという間に涙が溜まり、それを堪えるようにグシャと顔を顰めた。


「花梨…?」

「も、もう…ヤダ。何これ…長い間、綾音が心配させるから……」


綺麗な形の唇をへの字に曲げてグスッと鼻を啜る花梨とは小学四年からの付き合いで、私の大親友だ。

学生時代は毎日のように一緒にいた。
当然、高校も同じ所に進学。

登下校、移動教室、休み時間、部活。
花梨が隣りにいない時間なんてほとんどなかった。

一緒にいすぎて性格は勿論、夢や恋愛のこと、今何を考えているのかも、お互いの家族よりも解り合っていて。

まるで本当の双子の姉妹みたいだねって何度も言われた。




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