未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
でも、観たい。葉山を応援したい。

だって、どんなに突き放されても好きなんだもん……


「ごめん。応援出来ない」

「……なんで?」

「葉山を応援したい。そう約束したの」

「約束、ねぇ。綾音は先輩が好きなんだ?」

「好きだよ」

「あんなに冷たくされたのに?」

「それでも好きな気持ちは変わらない」


まだ葉山に言えてない。

細井とのこと。私の気持ち。

手紙じゃなくて、私の口で言わないとちゃんと伝わらない。


「私、行くね」


もう葉山のクラスのサッカーが始まってる時間だ。


また冷たい顔を向けられるかもしれない。
怖くて、不安でたまらないけど。

それ以上に、葉山を見たい。
好きっていう気持ちの方が上回って、弱気な私を動かした。


ドッヂボールが行われてる野球部の練習場から校庭に走る。

近いのに遠く感じ、気ばかりが急く。




試合はもう始まっていた。


「綾音!遅いよ、何してたの」

「ごめん。試合は?」

「始まったばっか。でも、葉山の様子がおかしいんだよね」

「おかしい?」


ほらあそこ、と花梨が指を差す方を見ると、葉山が時折チラチラと応援席に目を向けている。



「誰か探してる?」

「綾音のこと探してんじゃない?」

「まさか…」

「ねぇ、声出して応援してみなよ。気付くかもよ」

「でも」

「約束したんでしょ」


葉山が私を探してる?
待っててくれたの?

今朝、あんな風に気まずい雰囲気になっちゃったのに…?


鼓動が速い。凄く緊張するけど……
スーッと息を吸って、心を決めた。


「葉山頑張れっ!」


精一杯大きな声を出した。

応援の声があちこちから聞こえる。
私の声なんて掻き消されちゃうかもしれない。

葉山に届かない確率の方が遥かに高い。


なのに、葉山は私の声に導かれるようにこっちを振り返った。




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