未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「誰かに文通してること言った?」


花梨の問いに首を振る。


葉山はわからないけど、私は花梨以外には言ってない。
蒲田先生にもさっき初めて言ったばかりだ。


文通のことは特に秘密にしようって約束してたわけじゃない。

誰にも言わなかったのは、あえて言い触らすようなことでもないし。
そもそも私が言いたくなかっただけ。


完璧に隠そうとしてなかったから、手紙を下駄箱に入れるときそこまで注意してなかった。

届いた手紙を取る時は普通に周りに人がいる時もあったし、もしかしたら嬉しさのあまり「葉山から手紙きた」とか無意識に大きな声で言っちゃってたかもしれない。


それ以前に、受け渡し場所が下駄箱の時点で見てください気付いてくださいって言ってるようなものだ。


「容疑者は全校生徒か…」


花梨はいつか見た刑事ドラマの女刑事のように難しい顔をして呟く。


「どうする?」

「とりあえず葉山にはちゃんと言うよ。私はちゃんと手紙を入れてるって。受け取り場所変えればまた文通再開出来ると思うし」

「再開出来たとして、その後は?」

「その後?」


その後は今まで以上に注意して文通するじゃ駄目なの?


花梨が私を正義感溢れた強い目で見据える。
私は唖然として、次の言葉を待った。


「今日の放課後、張り込むわよ」

「それって…つまり犯人探しってこと?」


花梨は頷く。
先生は私達の話を口を出さずに見守っている。


「でも私、犯人探しなんて」

「甘いよ綾音。そこをちゃんとしないと、受け渡し場所を変えたところで何の意味もない。またすぐにバレて同じ事の繰り返しになるだけだよ」


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