未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
あれから月日はあっという間に流れた。


夏、三年生は部活を引退。
葉山と渡先輩は体育館から去った。


部活で仲睦まじい姿を見なくなって心底ホッとした私。

部活がなければ校内で会う事は滅多にない。
私の失恋の傷もすぐに癒える。

…そう思ってたけど、それは思い違いだった。


私の目も耳も葉山を探すのが癖になっていて、その能力は悲しい事に長けている。

夏休みが終わり、二学期が始まると至る所で葉山の姿を見つけた。

登下校中、次の授業の移動中、昼休み。

その隣には必ずと言っていいほど渡先輩がいて、私はその度に胸を痛めた。


忘れたいのに、忘れられない。

私は未練タラタラで、こんな最低最悪な失恋をしてもまだ葉山が好きで。

花梨の言う通り、私は大馬鹿野郎だと自分でも思う。



そんな日々が一ヶ月弱。
いつの間にか景色が秋色に染まった十月の第一土曜日。

細井がウザいほど暑苦しくなりそうな行事がやってきた。


体育祭だ。


天気は見事なまでの快晴。

青空の下、応援団が精一杯声を張り上げカッコ良く応援歌を響かせる。

この日のために応援団は練習を続けてきた。

汗を流し、喉を潰し、応援ダンスで腕が筋肉痛になりながら。

熱き応援団が今までの練習の成果を発揮している最中、私と花梨は保健係の当番で救護テント番をしていた。


「細井のやつ、めちゃくちゃ気合い入ってんじゃん」

「入り過ぎて暑苦しいだけだし」


細井と私の水と油の仲は健在で、細井の話題になるとついふんと鼻を鳴らしたくなる。


「そう言ってないで応援してあげればいいのに」

「応援?私が細井の?」


なんで私があんな奴の応援なんてしてあげなきゃならないのよ。


今回の体育祭だって、無理矢理応援団に入れられそうになった。

なんとかならずに済んだけど、ああいうの本当に迷惑。

熱くなるのは良い。
適当にやる人よりもちゃんと精一杯やる人の方がかっこいいし。

だけど、人に強要するのはどうかと思う。


私は体育祭自体適当にやるつもりはないけど、応援団になるつもりは全くなかった。



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