未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
クラス別リレーは2位で終わった。

細井は誰よりも速かった。
私が転ばなければ、絶対にうちのクラスは1位だったに違いない。


「謝るなんてらしくないじゃん」

「ホント失礼な奴。私だって悪いと思ったらちゃんと謝るし」

「何?悪いことしたの?」


細井はしれっと言う。
まるで全然気にしてないみたいに。


「私が転ばなければ1位取れたんだよ」

「それは俺の力不足。綾音は頑張ってたじゃん」


だから気にすんな、と言わんばかりに細井はふっと笑った。


なんでこういう時優しいんだろう。
いつもはあんなに意地悪なくせに……

調子狂う。困るよ。


私、全然集中してなかった。

リレーの前は細井に、転ぶ直前は葉山と渡先輩に気を取られて。

転んだ後もすぐ立って走り出せば良かったのに、ダサい姿を葉山に見られたショックとか皆に笑われてるんじゃないかとか、そんな事ばっか考えてた。

頑張ってたじゃん、だなんて言ってもらう資格私にはない。


頑張ってたのは細井の方。
球技大会の時もそうだったけど体育祭でもいつも全力投球で、そういう所は凄くカッコ良い。



「なぁ、体育祭が終わった後話すって言ってたアレ、今言ってもいい?」

「え?」


ドキッと胸が高鳴る。

心の準備をしてなかったから、突然訪れた緊張で目眩を起こしそうだ。


「うん……」


掠れた声で頷くのが精一杯だった。

細井はさっきまで処置する時に座っていた私の目の前の丸椅子に座る。

ギッと椅子が鳴る音でさえ、ドキッと心臓が反応してしまう。


「俺と付き合ってほしい」


細井の低い声が保健室に響く。

ストレートな告白に息を飲んだ。

細井の話が何なのか予想はしていたけど、いざ言われると恥ずかしさと嬉しさと戸惑いで頭が軽くパニック状態。

何て答えたらいいのかわからなくて、沈黙が流れた。





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