未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「あ、あの……」


何か答えなきゃ。
そう思うのに、言葉が出てこない。

細井の視線が真っ直ぐ過ぎて、逃げたくなるほどだ。


「まだ部長が好きか?」


まさか今ここで葉山の話題が出るとは思わなくて、思わずビクッと肩を揺らす。


細井は私と葉山の間に何があったか知らない。

でも、“まだ好きか”って聞いてくるってことは、最近の私達の様子を見て何かあったと勘付いてるんだと思う。


「なんで部長なんだよ」


何も答えられないでいると、それを肯定と捉えた細井はボソッと悔しそうな口振りで言った。


「なんでだろう……」


私にも自分の気持ちが理解出来ない。

こんな風になってまでも葉山のことが好きなんて、自分の胸を開いてネジが外れてないか見てみたいぐらいだ。


「自分でもわからないけど、多分どんなことがあっても嫌いにはなれないんだと思う」


いつか好きっていう気持ちが弱くなることはあるかもしれない。

葉山以上に好きになれる人が現れるかもしれない。

葉山への想いは恋愛から憧れに変わるかもしれないけど、でも嫌いにはなれない。


私は正真正銘の馬鹿で、自分が思ってる以上に葉山のこと好きなんだと思う。


これがきっと細井の告白への答えなんだ。


「ごめん。私、まだ葉山が好きなの」

「部長には彼女がいるんだぞ?」

「わかってる。でも、それでも気持ちは消えなかった」


簡単にこの気持ちを消せたらどんなに楽だろう。

二人の姿を見たり噂を聞いたり、その度に傷付くぐらいなら早く忘れたいとも思うけど。

でも、消せないんだから仕方がない。





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