未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「細井に頑張ってたなんて言ってもらえる資格ないんだ」

「何だそれ」

「転ぶ直前、私は何を思ってたと思う?葉山と渡先輩が一緒にいるのを見てショックで動揺してたの。だから足がもつれて転んだ」


走る前は細井のことを考えてたのに、葉山の姿を見た途端頭の中は葉山でいっぱいになった。

今だってこうして細井が告白してくれたのに、葉山の名前が出た途端それしか考えられなくなってる。


「どんなに別のことを考えてても、すぐに葉山で頭がいっぱいになる。唯一無二なの」

「報われないのに好きでい続ける意味があるのかよ。そんなの辛いだけだろうが」

「確かにその通りかもしれないね」


細井の言ってることが胸に刺さる。


好きでい続けても、報われない恋なら辛いだけ。

辛い想いをするために好きでいるわけじゃないけど、こればっかりは上手くいかないんだ。


「俺にしとけば?」

「え?」

「俺なら泣かせない。ずっと綾音を笑わせてやれる」

「細井……」


トクンと胸が鳴る。


何だろう。
何の根拠もないけど、細井といれば毎日が楽しくなりそうな気がする。

喧嘩もたくさんするだろうけど、それ以上に涙が出るほど笑って。


でも、違う。

心の中に別の人がいるのに、細井を選べない。

こうやって本気で想ってくれる相手には、私も本気で返したい。


「細井にしとくなんて出来ないよ」

「なんで?綾音が部長を忘れられるまで待つし。つーか、俺が忘れさせる」

「そんなの利用するみたいで嫌なの」

「利用すればいいだろ?俺がいいって言ってんだから」

「細井が思ってた以上に良い奴だったから利用なんてしたくないの」



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