未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「何って、見てわかりません?」


ちょっと細井っ‼︎
なんて言い方してんのよっ……

ふっ、と嘲笑うかのように鼻で笑う細井に、私の方がヒヤッとして振り返る。


「ほ、細井…?」


言い方もそうだけど……
なんていう目をしてるの?

口の端をニヤリと上げて不敵な笑みを浮かべているのに対して、目はかなり威圧的だ。

鋭く細めて、瞬きもせずに葉山を睨み付けてる。

挑発してるかのようにも見える。


引退はしたけど、仮にも部活の先輩なのに。
まさか細井が葉山にこんな態度を取るなんて驚きを隠せない。


「今のは空気を読んで退散するとこですよ。それとも、わざと邪魔したんですか?」


葉山は何も答えない。

なんで否定しないの?
まさか、わざと大きな音を立ててキスされそうになってるのを阻止してくれた……?


あり得ない。
期待したくないのに、胸がドキドキする。

数パーセントの期待が、葉山の沈黙が長引くにつれて膨らんでいく。


なんとか言ってよ、葉山。

今のはわざと?
なんで邪魔したの?

葉山には、私が誰にキスされようが関係ないんじゃないの?


「俺は…」


長い沈黙の後、葉山が口を開いた時。


「西條さん、傷はど……」


廊下から足音が聞こえ、すぐに蒲田先生が顔を覗かせた。

私達の異様な空気に気付いて、蒲田先生は目をパチクリさせる。


「あら?私、お邪魔だったかな」

「大丈夫ですよ先生」


細井がすぐにいつもの調子で答える。

細井のこういうとこ尊敬する。
すぐに切り替えて顔に出さないなんて私には出来ない。


…切り替えなんて出来ないよ。
葉山の答えをまた聞いてない。

聞きたい、どうしても。



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