未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
異様なまでに張り詰めた空気。

呼吸をするのも辛い。

ここにいるだけで何年か寿命が縮まったかもしれないと思うほど心臓は激しい鼓動を繰り返していた。



蒲田先生が出て行ってからどれぐらい経っただろう。
恐らく1分も経ってないのに、凄く長く感じた。


突然二人っきりにされてもまだ心の準備が出来てない。

凄まじいこの緊張に耐えるだけでいっぱいいっぱい。

この状況をどうしたらいいのかわからず、ギュッと握った手を見つめているとガサッと物音がして肩をビクッと上げた。


「足、見せて」


葉山は先生が用意したガーゼを手に持って、丸椅子に座る。


葉山の懐かしい匂いがふわっと鼻を掠め、手を伸ばせば触れられるこの距離に更に心臓が跳ね上がった。


「あ…っ、じ、自分で出来る……ますから、おおお構い、なく……です、」


動揺し過ぎ。
しどろもどろになり過ぎて恥ずかしい。

敬語とタメ語が混じって変な言葉遣いになってる私を、葉山は笑いもせずに真顔で視線を送ってくる。


「いいから見せて」


いいから見せてって……全然良くない!

葉山は乙女心が何もわかってない。

こんな図太くて砂だらけの汚い足を好きな人の前に曝け出すなんて絶対に無理だし!


「ほ、ホントに大丈夫だからっ…」


足を隠すように体の向きを変える。

同時に葉山の強過ぎる視線から逃げたのに、変わらず横から痛いほどそれを感じる。


どうしよう、この状況……

パニックに陥ってる頭で考えていると、「へぇ」と葉山の低く不機嫌な声が聞こえ恐る恐る振り返った。


「っっ…」


ビリリと電流が走る。
蛇に睨まれた蛙のように身動きが出来ない。

怒りを剥き出しにした葉山の瞳から逃げられない。




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