未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「細井はいいんだな」

「え?」

「さっき細井が消毒してただろ」

「それはっ……」

「別に言い訳なんていらない。俺には関係ないし」

「っっ……何…それ」


葉山の冷たく突き放すような言葉に声も身体も震える。


関係……ない?
私がどんな気持ちでいるのか知らないくせに……

そんな言い方酷いよ……


「……何も知らないくせに」


ふつふつと色んな感情が込み上げてくる。

怒り、悲しみ、そして好きだという想い。

文通が途絶えたあの日から今日までの想い全てが一気に溢れ出した。


「葉山のせいじゃん!葉山が文通やめようなんて言うから!」

「は?最初に何も言わずやめたのは綾音の方だろ⁉︎」

「違う!私はやめてなんかない!ちゃんと下駄箱に手紙入れたもん!」

「いつの話してんだよ。俺が何度か送っても返事一つなかったじゃねぇか!」

「私は葉山が遊びに誘ってくれて嬉しかった!すぐに行きたいって返事書いて入れたの!なのにそれを渡先輩がっ……」


渡先輩の名前が口から突いて出た瞬間、ハッと息を飲んだ。


これは絶対に言うつもりはなかった。

葉山には知られたくなかったのに……


「渡?渡がどうしたんだよ?」


案の定、葉山は意味がわからないと言わんばかりに目を細めた。


「な、何でもない」

「何でもない奴の名前が今の流れで出てこないだろ」


葉山の正論にぐっと口を噤む。
やっぱり誤魔化せるわけがない。

ここは強行突破するしか方法はなさそうだ。


「もういいよ」

「何?」

「消毒ぐらい自分で出来るから葉山は戻ってくれていいよ」

「……綾音」


久しぶりに名前で呼ばれて、こんな時でも胸がきゅんと震える。


好きだよ、葉山……

葉山はもう別の人の物なのに、諦めなきゃいけないのに。

好きの気持ちが消えない。

気が緩むと、好きって言ってしまいそうだ。




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