未来郵便 〜15年越しのラブレター〜

「一応謝っとくわ」

「一応って…それ謝ってないでしょ」


無理矢理キスしようとしといて一応ってどういうこと？

細井らしいっちゃ細井らしい。
というか、細井が真面目に謝ってきた方が気持ち悪いというか怖いけど。


呆れて息を吐き、頬杖をつく。

「悪いと思ってるってマジで」と、細井はふっと笑って後ろに手をついた。


オレンジの空を真っ二つに分けるように伸びていく飛行機雲。

鳥が鳴きながら家に帰っていく。

冷たくなった風が汗を掻いた肌を撫で、そろそろ体育館に戻ろうかと立とうとした時。


「あのキスは振りだったんだよ」


細井が到底理解出来ないことを言ってのけた。


「振り？」


私は動きをピタリと止めて、細井を見据える。


「キスなんて端からするつもりなかった」

「……どういうこと？」


端からするつもりがなかったなら何であんなことしたの？

私をからかったってこと？

もしそうなら、コイツまじで最低。
こんな奴の応援団姿を見て少しでもときめいた自分を殴ってやりたいところだ。


「部長を試したかった」

「葉山を試す？」

「ああ。部長が廊下にいるの気付いたから。部長の気持ちを知りたかった」

「どういうこと？全く意味がわからないんだけど」


この二週間、葉山の声や姿、噂を聞かないように只管周りからの情報をシャットダウンしてた私。

当然、ドキドキしたり心臓が活発になることなんてなかった。

だけど今、細井の意味不明な発言に動揺して心臓がバクバク音を立てている。


「部長は綾音に嫉妬してほしくて渡先輩と付き合ったんだよ」

「は……？」

「噂だけど」


何それ……嫉妬してほしい？
だから渡先輩と付き合った？

なんでそんな噂が流れてるの？
葉山が言ったことなの？


頭が混乱する。

あり得ない。そんなの……

私に嫉妬してほしいなんて……
あの葉山がそんな浅はかなことする？