未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
二日前。

部活後、花梨と昇降口に向かっている時のことだった。


いつもよりだいぶ帰り支度が遅くなって、多分私達が最後だったんだと思う。

校内はしんっと静まり返り、薄暗く、人の気配がない学校はやけに不気味だった。


なんとなく怖くて足早に昇降口に向かっていると、突然花梨が足を止めた。


「ねぇ、声聞こえない?」

「え?声?」


神妙な面持ちの花梨。

ヤダ…おばけとかじゃないよね……

背筋がぞくぞくする。

花梨の腕をギュッと握って耳を澄ませてみると、人気がない三年生の教室から微かに声が聞こえた。


女の人のすすり泣く声だと思う。
それから、低い男の人の声。

とりあえずおばけとかじゃなさそう。

ホッとしたのもつかの間、ガラッと勢いよく教室のドアが開いた。


隠れる暇なんてなかった。

教室から険しい顔をした葉山が出てきて、私に気付くと大きく目を見開いた。

まさか葉山が出て来るとは思ってなかった私も、葉山と同じような顔をしてると思う。

頭の中なんて真っ白だ。

「あ……」と開きっぱなしの口から声が漏れると、葉山も何か言いたげに口を開いた。

だけど、すぐに唇を噛むように閉じて、気まずそうにふいっと視線を逸らすと昇降口に消えていった。


「ねぇ、今の声葉山だったってことはさ、女の人は……」


花梨が教室の方に視線を送りながら言う。


多分…というか、絶対もう一人の声は渡先輩だ。

泣いてるところからすると、喧嘩とかしてたんだと思う。


でも、渡先輩が教室から出て来る気配はない。

もうあと数分で完全下校時間になる。
早く帰らないと、先生に見つかったら大目玉だ。




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