未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「大輝には好きな人がいた。しかも見たところ両想い。なら私は友達のままでいいかなって思ったのに……偶然、大輝が下駄箱に入ってた手紙を嬉しそうに読んでる姿を見ちゃったの。最初はどんなこと書いてんだろうって興味本位だった。でも、初めて覗いた手紙の内容が綾音ちゃんからのデートのお誘いで……気付いたら手紙をくしゃくしゃにしてポケットに入れてた」


やっぱり、勇気を出してデートに誘った手紙は葉山には届いてなかったんだ。

もし、この時気付いて葉山に言ってれば……なんて、今更後悔しても後の祭りなんだけど。

そう思わずにはいられない。


「人間って一回卑怯なことをすると感覚が麻痺するの。二回目、三回目って回数重ねるごとに悪気とか罪の意識とかなくなっていくの」


涙を制服の袖で拭うと、渡先輩は私を見据えた。


「卑怯なことして勝ち取ったって幸せじゃないって言ったよね?でもね、卑怯なことをしてる時は正義が何かなんて見失っててわからない。私は、二人がぎこちなくなっていくのを心の中で喜んでた」

「……今は?」


あの時は卑怯な行為に洗脳されて心まで荒んでいたかもしれない。

だけど、今目の前で泣きながら話してる渡先輩を見ると正義がどこにあるかわからないようには見えなかった。


「なんであんなことしちゃったんだろうって……後悔してる」


先輩はふるふると首を振る。
声を詰まらせて言うと、再び涙が流れた。


「さっきね…大輝と喧嘩しちゃった。噂を聞いて、居ても立っても居られなくて」

「噂?」

「私の告白をOKしたのは、本当に好きな人に嫉妬してほしいからだって」


細井から聞いた噂のことだ。

まさか本当にそんな噂が流れてるなんて……


「噂は本当なのか問い詰めたの。そしたらね」




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