未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「主任の葉山です。えーっと……九年振り?ぐらいか?」


ぎこちなく言う葉山に、細井が「そうですね」と返す。

私はまだ声を出せないぐらい状況を整理出来てなくて、目の前にいる葉山の顔をただ見つめた。


「何、知り合い?」

「二人とも中学の部活の後輩で」

「まじで?すげーな。そんな偶然あんだな」

「ですね。俺も驚いてます」


私も驚いてます。かなり。

細井とは高校も一緒だったから葉山ほど久しぶりなわけではないけど、葉山とは葉山が中学を卒業したっきり会ってない。

葉山は県外の高校に進学した。
バスケの強豪校に行ったのは知ってるけど、それ以降の行方はまるっきし知らない。

もう会うこともないと思ってた。

なのに、まさか職場で再会するなんて神様のイタズラにもほどがあるよ……


「ま、丁度いいや。西條さんは葉山の専任アシスタントね。葉山、教えてやって」

「えっ‼︎⁉︎」


葉山の専任⁉︎⁉︎
私が⁉︎


「なんか問題でもある?」

「あ…いえ……」


ありますあります!問題大ありですっ‼︎

なんて冗談でも言えない。
新入社員が直属の上司相手に言えるわけがない。


「まさか二人付き合ってたとか?」


うわ!そういう話題ホントやめて!
空気読んでよ!


推定年齢三十歳。
若くして課長、顔はそれなりに格好いいけど少しチャラい。

空気は読めない、人の領域にズバズバと踏み込んできそう。

この短時間で平野課長のイメージは最悪だ。


「冗談やめて下さい、先輩」


呆れたと言わんばかりに溜め息を吐く葉山。


冗談やめてって…

私と付き合ってたって思われるのが迷惑みたいな言い方に、軽く傷付いてる私。

そりゃ、あの頃の私はガキで生意気で全然女の子っぽくなかったし、恋に恋してたみたいなところあるし。

だけど、そんな言い方しなくたっていいじゃない。




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