未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
そう。私は幸せになるって決めた。

葉山への想いは完璧に封印出来たはずだった。


なのに、やっぱり私はどんなに頑張っても葉山を好きになる運命なのかもしれない。





「お疲れ」


初日が終わり、細井と帰りが同じになって駅までの道を並んで歩く。


「それにしても驚いたよな」

「ほんと。内定式でも入社式でも細井がいるの全然気付かなかったよ」

「俺も。つーか、高校卒業振り?元気だった?」

「まぁね。この通り」


高校卒業の時、細井に二回目の告白をされた。

私の中で細井は友達。
それはこの先も変わることはないから断った。

私が『ごめん』って言うと、細井は『やっぱりな』って笑って。

それから今日まで一度も連絡を取ってない。
あの日の笑顔の裏に、細井の悲しそうな顔が見えた気がして私からは連絡出来なかった。


「綾音、大丈夫か?」

「ん?何が?」

「何がって、葉山部長の専任アシスタントだよ」

「ああ……ね。せっかく忘れたのに、自分の運命を恨むよ」


同じ会社ってだけならまだ良かった。
数十階建の自社ビルを持つうちの会社では違う部署だと滅多に社内で会うことはない。

なのに、こんな大きい会社でいくつも部署があるはずなのに何で同じ配属先でしかも専任アシスタントなんかになっちゃうの?

おかしいでしょ。
何かの陰謀としか思えないし。


「俺も同じ。何が悲しくて昔好きだったやつと失恋した原因の恋敵と一緒に働かなきゃいけないわけ?」


ふっ、と鼻で笑いながら冗談混じりに言う細井。

確かにそうかも。
細井の方が可哀相だったり?


「ドンマイ」

「ドンマイじゃねーし」

「ファイト」

「うっせ。お前、全然変わってねぇな」

「そっくりそのまま返すわ」




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