狼少年、拾いました。
 ミェルナの質問にゼーラの整った顔がより生き生きとして輝く。

 「背が高くてね、男の子たちの中で一番力が強いの。この間も大人と一緒に街へ買い物へ出かけて、帰りに強盗に遭いかけたけどやっつけちゃったんだって!それに、とっても優しいの。」

 夢中で瞳を輝かせていたゼーラだったが、はっと我に返ったようにミェルナの顔を覗きこんだ。

 「ごめんね、ほんとはこんなこと頼みたくないんだけど……。」

 申し訳なさそうに言うゼーラに対してミェルナはけろっとしていた。

 「いいのいいの。心配しないで。森であってもどうせ向こうから逃げちゃうんだから、余計なことを言う間もないわ。」

 村ではどんな風に自分のことが伝わっているのか知らないが、森で鉢合わせした村人はミェルナの姿が目に入ったとたん踵を返していた。

 手をひらひらと振って明るく言いながらも、ほんとうは胸が少しだけ締め付けられるのを感じていた。



 見えなくなるまでゼーラの背中に手を振る。

 「楽しそうにしていたではないか。」

 いつの間にやらスティーヌが再び姿を現していた。

 「うん。ゼーラってなんであんなに優しいのかしら。容姿に恵まれると心まできれいになるのかな。」

 ゼーラが消えていった木々を見つめるミェルナの言葉にスティーヌは不思議そうに目を丸くした。

 「お前はあの娘の心は美しいと思っているのか。」
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