狼少年、拾いました。
また耳元でスティーヌの声が聞こえたとたん、背中にドンッと押されたような衝撃が走り、籠を放り出してしまった。

プベルトの時と同じように、スティーヌが乗り移ったのだ。

転びそうになった体勢を必死で立て直し、ミェルナは走り出した。

「追うぞ!」

「言われなくても分かってますよ。」

男たちの声を背中で聞きながらミェルナは必死に草をかき分け斜面をよじ登り、レスクの洞窟へ急いだ。

スティーヌの力はすさまじく、余計なことを考える間もなくレスクのいる洞が見えてきた。

レスクの姿を探そうと目を凝らした瞬間、体が鉛のように重くなり、足が絡まり派手に前へ転んだ。

「すまない、私の力はこれが限界なようだ……!」

スティーヌが離れたせいなのか、その分の疲労が嵐の大波のようにミェルナを襲いかかる。

「れ、レスクー!」

息を切らしながら必死の思いで叫ぶと、レスクが剣を持って洞から出てきた。

「追っ手が来たわ!早く逃げて!」

レスクが血相を変えた。

「急いで!荷物、まとめてあるでしょ!?」

レスクはすばやく荷物を手にし、膝に手を付き肩で息をしているミェルナの手首を掴んだ。
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