狼少年、拾いました。
「大丈夫…じゃない。少し、休ませて……。」

いつしかミェルナたちは、レスクが倒れていた場所の近くへ来ていた。

「そんな暇あるわけねーだろ。さっさと行くぞ、あいつは足が速いんだ。」

「うわちょっと!何するの!?」

「馬鹿、おぶってやるんだよ!ごちゃごちゃ言わずに背負われてな!」

レスクは慌てるミェルナをおぶさって走り出した……というより歩き出そうとしたが、背後から飛んできた怒鳴り声に足を止めた。

振り返ると茂みの中から追っ手2人が姿を現した。

それを見たレスクは舌打ちをしてミェルナをゆっくり下ろし、鞘から剣をゆっくりと引き抜いた。

「勝てるのか?言っておくがわたしは何も出来ないぞ。特にお前にはな。」

「やっぱりいたのかよ、お前。」

姿を消したまま尋ねてきたスティーヌに呆れたようにため息をつくレスク。

しかしすぐに真顔に戻り剣を構えた。

その瞬間レスクから発される空気にミェルナは気圧された。

彼自身が炎のように熱を吐き出し、周りの大気を翻弄しているようだった。

男2人も剣を抜いてじわじわと距離を詰めてくる。

3つの剣先が鋭く光る。

張り詰めた空気が川の激しく流れる音をより際立たせる。

「ちょっと待ってください!」
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