狼少年、拾いました。
 戸惑いが歩みを早めさせた。

 「君が、ミェルナ?」

 ミェルナの動揺を察したのかその村人は慌てたように声を掛けた。

 女とは違う低い声に思わず足がすくんだ。

 男だ。

 背は高く、筋肉の付き方もミェルナとはずいぶん違う。

 彼はあっという間にミェルナのそばまで来てしまった。

助けを求めてスティーヌを探したが、自分の姿を村人に見られてはいけないと思ったのか彼は姿を消している。

これではキョロキョロしても気味悪がられるだけだと腹を括った。

 「そうだけど……。あなたは?」

 「僕はプベルト。」 

 その名前に、外れクジを引いたようにどきっとした。

 それが顔に出てしまっていたのか、プベルトは不思議そうに眉を上げる。

 「村の誰かが僕の噂でもしてたのかい?」

 ゼーラたちと同じ常磐色の目にいたずらっぽい光が浮かぶ。

 「いえ、そういうわけじゃなくて…。」

 「なら安心だな。前から君のことが気になってたんだ。少し話さないか?」

 高いところから二つの目に見下ろされ、心のなかがザワザワと波立った。

 村人たちと同じ目のはずなのに、まるで彼らとは違う色の瞳に見つめられているかのようだった。
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