狼少年、拾いました。
 ゼーラと話している時も同じようなことを思ったことがあるが、それとはほんの少し違う気もする。

 好奇心がじわじわと浮かび上がってきた。

 (でもダメ。ゼーラからお願いされてるんだから。)

 「あ、ごめんなさい。これから洗濯しなきゃいけないの。」

 好奇心を約束で鎮めて、プベルトと距離をとろうとした。

 「なら家まで送るよ。その籠持つからさ、こっちに貸しなよ。」

 ミェルナの言ったことはまるで気にもせず、距離を詰めるのみどころか両手に持っている薬草の入った籠に大きな手を伸ばしてくる。

 「大丈夫よ。それに知ってると思うけど家に男の人は近付けないのよ。」

 さらに後ろに下がりながら籠を隠すように背後に回して苦笑いしたが、プベルトはまだ引き下がらない。
 
 「近付けなくたっていいさ。行けるところまで……ほら、貸しなよ。」

 気が付けばプベルトはゼーラですら遠慮するだろうというほど近くに来ていた。

 彼を見ると、先程の妙な感覚はとうに消え去り、村人と同じ常磐色の目が見下ろしているだけであった。

 戸惑いと焦りの中に不気味さが混じりはじめる。

 「いえ、あの、ほんとに大丈夫だから。……あ、こっちでまだやる事が残ってたわ!、だからごめんなさい!」

 返事も待たず顔も見ず、ミェルナはプベルトに背を向けて一目散に駆け出した。
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