狼少年、拾いました。
 ミェルナ自身も肌がぞわりと粟立つのが分かった。

 「小屋まで走れ。」

 スティーヌの言葉から滲む危機感に煽られる。

 考える間もなく足を踏み出した。

 瞬間、プベルトから逃げた時と同じような力が体にかかるのを感じた。

 スティーヌが力を貸してくれているのだ。

 夢中でミェルナは走る。

 スティーヌのおかげであっという間に小屋まで近付けた。

 だが突然、ミェルナは前に放り出された。

 背負っていた重い怪我人を弾き出し、壁はミェルナとスティーヌだけを中へ通したのだ。

 (そうだ!見えない壁!)

 男はこれ以上近付けない。

 スティーヌを頼るように見る。

 だが期待していたような言葉は出てこなかった。

 「置いていくしかない。」

 「え!?でも__。」

 「構うことはない。」

 ミェルナはなおも食い下がろうとした。

 しかしその時、何かが木立の間からゆらりと姿を現した。

 黒いぼろぼろの布を頭から被った男のようなモノだった。

 地面すれすれを滑るように迫ってくる。
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