狼少年、拾いました。
 先程のモノ……あれはこの世のものではない。

 あれが追いかけていたもの、つまりミェルナが運び込んだ怪我人はきっと“向こう側”のことも知っているはずだ。

 彼が持っていた剣がその証拠だ。

 どうしてもミェルナより先にこの少年と話しておきたかった。

ミェルナに妙なことを吹き込んだりして変に夢をみられたりされると困る。

 (余計なことは言わないよう釘をさしておく必要がある。そしてさっさと出ていってもらおう。面倒なことは御免だ。)

 すやすやと寝息を立てているミェルナに目を落とす。

 直前にプベルトのことがあったにも関わらず、怪我をしているとはいえ見知らぬ男を自分の寝台に寝かしてしまう……呑気というか、危機感がないというか。

 (そういう風に育てたのは自分だが。)

 だがきっと男が全く近寄れない環境や、元々の血筋の素質のせいもあるのだろう。

 何はともあれ随分と大きくなったものだ。

 ここまで無事に成長して良かったと安心する反面、少し寂しい気もする。

 きっと自分が人間で娘がいたらこんなふうな気持ちになるのだろう。

 薬で無理に寝かせたことに罪悪感を感じながら、スティーヌはそっと眠る彼女に毛布を掛けた。

 

 (……。)

 夢の続きか…?

 暗闇の中で激しい痛みにのたうち回ったのは覚えている。

 何も見えない真っ暗な場所で必死にもがいていた。

 だが今は違う。

 暗闇ではなく、彼は知らない小屋の中にいた。
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