狼少年、拾いました。
 声の主の姿が目に入った瞬間、ガバッと跳ね起きて距離をとった。

 「慌てるな。敵ではない。」

 あふれでる殺気に動揺する様子もなくソレは両手を上げて見せてなだめる。

 「お前人間じゃないな。」

 四角形の影のような体に、目と口と棒のように細い手足が付いたような姿。

 “向こう側”の住人だった。

 「見ればわかるだろう。」

 肩をすくめるその仕草は人間らしい。

 どうやら敵意はないようだ。

 「ここはどこなんだ?お前が手当てしてくれたのか?俺の剣は?てかお前誰だ?」  

 「静かにしてくれないか。起きてしまう。」

 ソレは後ろを気遣うように振り返りながら言った。

 それで初めて、黒い体の向こうに横になっている少女の姿が透けて見えているのに気付いた。
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