狼少年、拾いました。
 「ええ、まぁ……。」

 しどろもどろな口調で目を泳がせる。

 手まで心臓になってしまったようだ。

 壁に付けられていたろうそくの灯りが揺らいでいるのがやたらと目につく。

 「ん?でも待って。」

 慣れないことをされレスクから目をそらしていたミェルナだったが、あることに気がついて打ってかわって真っ直ぐ彼の顔を覗きこんだ。

 「治療するときあなたの服からお金出てきたわよ?」

 今度はレスクが目を泳がせる番だった。

 それを見て、水の入った革袋が釘で穴を開けられたように動悸が治まった。

 「別にいいわよ、お礼なんてね。でもあわよくば払わなくてもいいか、なんてそういう考えは良くないわね。」

 誤魔化すように説教を垂れるミェルナ。

 「おいちょっと待てよ、俺の荷物物色したのか?そういう趣味はよくないぜ。」

 負けじと言い返すレスク。

 「違うわ、治療中あんたが暴れた時に出てきたのよ!」

 そのとき、シューッと鍋の中身がふきこぼれる音が上から聴こえた。

 「あっ、鍋!とにかく早く治してちょうだいね!」

 慌てて上へ戻ったミェルナの背中を見届けると、スティーヌは怪我人に向かってあっという間に距離を詰めた。

 「いいか。妙な気を起こすなよ。」

 身がすくむようなスティーヌの気迫に全くひるむ様子もなく、呆れたように肩をすくめるレスク。 

 「心配すんなって、俺は美人にしか興味ねえから。」

 「そうか。なら安心だが、次余計なことを言うと二度と口がきけないようにしてやるからな。」


     *   *   *


 「手伝ってあげるよ、貸して?」

 いっぱいになってかなりの重さになっているはずの籠をプベルトは軽々と両肩に持ち上げた。

 「すごーい!ありがとう!」

 ゼーラとマルナは歓声を上げる。

 「これくらい軽い軽い。」 

 「さすがプベルトね。ほんと村で一番頼りになるわ。」

 目をきらきらさせてプベルトの顔を見上げる。
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