狼少年、拾いました。
 「いやいや、ゼーラの親父さんには敵わないよ。そうだそれで思い出した、ゼーラ、戻ったら親父さんが話があるってさ。」

 「えー、改まって何かしら。でもありがとうね、プベルト。」

 少しは距離を縮められるかなと期待して極めて自然に飛び切りの笑顔で彼を見上げたが、彼のいつもの笑顔を見るとそうはいかないようだった。

 プベルトが笑う度に籠の中の白い花が揺れる。

 それを見てふと思い出したことがあった。

 「そういえば、この花って街に卸すのよね?」

 「?」

 急にどうした、とプベルトとマルナが見つめてくる。

 「その……途中で襲われたりしないかなって。」

 「え、まさか盗賊とかに?」

 二人は意外そうに目を丸くした。

 「盗賊も暇じゃねぇからさ、もっとおっきな隊商とかを狙うと思うぜ?」

 「そうよゼーラ、心配しすぎよお!突然どうしたの、今までなんともなかったじゃない。」

 「そっか…それもそうね!」

 これ以上話を掘り下げられないように大げさなくらい明るく振る舞いながら二人に同調した。

 こんな風に笑顔でいれば、大人……特に男の人たちは優しくしてくれるし、物事は楽に運んだ。

 でも時々不安になるくらい虚しくなる。

 こうしてできる限り愛想良くして、もし裏切られたり傷つけられたりしたら、どんな自分でいればいいのだろう。

 「そういえばなんで畑の方にいたの?今日男の人は午後は狩りじゃなかった?」

 マルナの一言で思考の弁が切り替わった。
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